脚のしびれを伴う「腰痛」に注意

「腰痛」は多くの人が経験する症状の1つだが、腰痛に加えて脚のしびれがある場合は神経が圧迫されている可能性が考えられる。

注意が必要な症状と、神経が圧迫される主な病気について、札幌医科大学教授の山下敏彦(やました・としひこ)さんにうかがった。

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「腰痛」があり、さらに「歩くと脚に痛みやしびれ、脱力感がある」「腰や脚に感覚の麻痺(まひ)がある」「つま先立ちやかかと立ちができない」「尿が出にくく、残尿感や尿失禁がある」などの症状がある場合は、注意が必要です。

椎間板ヘルニア」や「脊柱管狭窄症」などの病気が起きていて、脊柱(背骨)の中の「脊柱管」という細長い空間を通る神経が圧迫されている可能性があります。

これらの病気をほうっておくと、歩行障害などが起こり、生活の質が低下するおそれがあるので、早めに医療機関を受診することが勧められます。

椎間板ヘルニア
「椎間板」は、骨(椎骨)と骨の間にあり、クッションの役割をしている組織です。椎間板の外周は硬い「線維輪」、内部はゼリー状の「髄核」から成っています。

重労働やスポーツなどによって腰に大きな負荷がかかったり、加齢による変化で線維輪に亀裂が入ったりして、髄核が後方に飛び出して神経を圧迫すると、痛みやしびれ、麻痺などが起こります。これが、椎間板ヘルニアです。

◆脊柱管狭窄症
脊柱管が狭くなり、その中を通っている神経が圧迫されると、痛みやしびれが起こります。これが、脊柱管狭窄症です。

脊柱管が狭くなる主な原因として、加齢があげられます。加齢により、脊柱の後ろ側にある「椎間関節」が変形したり、上下の椎骨をつなぐ「黄色靭帯(じんたい)」が厚みを増したりすると、脊柱管狭窄症の原因になります。

脊柱管狭窄症の場合、痛みやしびれ以外の特徴的な症状として、「間欠跛行(かんけつはこう)」があげられます。

「歩いているうちに、腰から脚にかけて痛みやしびれが起こる」「立ち止まって、前かがみになったりしゃがんだりすると症状が治まる」「再び歩き始め、しばらく歩くと、また痛みやしびれが起こる」ことを繰り返すもので、少しずつしか歩けなくなります。

ただし、間欠跛行があるからといって、すべてのケースが脊柱管狭窄症に当てはまるわけではありません。間欠跛行は、「閉塞性動脈硬化症(※)」という病気でも見られます。

その場合、前かがみになるなどの姿勢に関係なく、立ち止まって休めば痛みが軽減するので、脊柱管狭窄症と見分けられます。

動脈硬化が原因で、四肢(主に下肢)の動脈に狭窄あるいは閉塞が起こり、血流障害を来す病気。

■『NHKきょうの健康』より