昨年8月、被告の自宅マンションを直撃すると入り口には、

《迷惑です。インターホンを押し取材をすることはおやめください。悪質な場合、警察に通報します》

 との“強気”すぎる貼り紙が。

「予約していたフレンチに遅れそうだったから……」と供述していると報じられた被告
はその後、テレビ局の取材に、「自分の体力にはその当時は自信があったんですけれど」「メーカーの方には心がけていただき、高齢者が安心して運転できるような世の中になってほしい」などと遺族感情を逆なでするような発言を連発し、世間からは厳しい目が向けられた。

 12月に改めて訪ねると事故当時、助手席に同乗していた妻と思われる女性が、

「お断りします!」

 と“強気”の返事をするばかりで、被告の反省や、遺族に対する思いなどを聞くことはできなかった。

 その後、今年の2月にブレーキとアクセルを踏み間違えて死傷者を出したとして、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪で在宅起訴された。

 近所では被告夫妻の評判は意外と悪くない。

「奥さんも旦那さんも、すごくいい人よ。旦那さんは事故を起こしたショックで、本当に心身ともにボロボロになったみたい」(近所の主婦)

「旦那さんは高級官僚なのに、庶民的なマンションに住んでいるし、車も国産車プリウスだしね」(近所の住民)

 そして今回、10月8日に東京地裁で初公判が開かれることになり、改めて気持ちを聞こうと、インターホンを鳴らすと、

「取材はすべてお断りしておりますので、申し訳ないんですが……」

 と妻らしき女性。以前に比べると“強気”の姿勢は鳴りを潜めていた。

 取材申し込みの手紙をポストに入れるので、読んでくださいと言うと、

「はい、わかりました」

 と神妙な声で応じた。被告とともに心境の変化があったのだろうか。

東池袋の事故現場に変化がーー

 一方、献花が絶えなかった東池袋の事故現場にも変化が起きていた。全国から送られてきた1140万円の募金で、豊島区はすぐそばの「日出町第二公園」に「東池袋自動車事故慰霊碑」を建立。7月11日には、その除幕式がとり行われた。

 そこには、たびたび記者会見を開き、被害者遺族の無念さや、被告の厳罰を訴えてきた真菜さんの夫で、莉子ちゃんの父親の松永拓也さん(33)の姿もあった。

 今年になり、プライバシーなどの理由で非公開だった下の名前を、「拓也」であることを勇気をもって公表。

交通事故をゼロに!」

 と松永さんは、悲しみを乗り越えて訴えた。しかし、その碑に真菜さんと莉子ちゃんの名前は刻まれていない……。

「この事故がきっかけというのは間違いありませんが、慰霊碑の目的は事故の風化を防ぐ意味とともに、もうひとつ、交通事故の根絶という意味も込められています。したがって特定の名前は入れなかったわけです」(豊島区役所)

 ここを、被告は訪れたのだろうか?

「お忍びで来ていたらわかりませんが、まだそれは聞いておりません」(同)

 高齢の被告は、たとえ懲役などの有罪判決が出たとしても、年齢や健康を理由に刑の執行が停止される可能性もある。

 となると、飯塚被告にできる償いは、せめて慰霊碑に手を合わせることになるはずだが……。