世界的に感染が拡大している新型コロナウイルス。日本国内では感染の有無を診断する検査の実施が進まない状況がある。実際の臨床現場では、医師が「検査が必要」と判断したら保健所に連絡し、さらに保健所が地方衛生研究所(衛生研)など実際に検査をする機関に依頼する流れとなっている。

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 最大の問題は検査の実績である。当初、政府は「1日約3800件の検査が可能」(2月18日)と説明したが、実際にはそれらをフル稼働させず、2月下旬の段階で1日平均で900件の検査しか実施していなかったことが国会での追及で明らかになった。

 苦痛を訴える国民、そしてそれを治療しようとする医師たちが、検査を受けようにも検査できる数があまりに少ない──そんな医療崩壊ともいえる事態を招いたのは、政府のミスと怠慢以外のなにものでもない。

 ウイルスの感染の有無を調べるには、のどの粘液などを採取し、試薬を加えるなどしてこのウイルス特有の遺伝子配置を検出する「PCR検査」が行われる。

 PCR検査をするには患者を診察した医師が保健所に連絡し、保健所が必要ありと判断した場合に限り、国立感染症研究所(感染研)の配下にある衛生研などが検査を実施する。

 PCR検査は感染研と衛生研がほぼ独占的に実施しており、現状、民間機関が検査するケースは少ない。

 その独占状態が問題との指摘がある。

「感染研は感染症の拡大防止が目的ではなく、感染症の調査や研究を行う組織です。新型コロナ問題でも、感染研は初期段階で拡大防止ではなく、疫学調査PCR検査の目的としていた。

 しかも感染研は検査をする母体を、傘下の衛生研だけに絞り、民間に委ねなかったので検査できる人数に圧倒的な不足が生じ、保健所での検査拒否が続出しました」(全国紙社会部記者)

 2月28日の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)に出演した元感染研研究員で白鴎大学教授の岡田晴恵さんは驚愕の証言をした。

 その日、岡田さんは民間機関にPCR検査が普及しない理由について、ある政治家から以下のような説明があったと明かした。

《これはテリトリー争いなんだ。このデータはすごく貴重なんだ。衛生研から上がってきたデータを全部、感染研が掌握する。このデータを、感染研が自分で持っていたいということを言っている専門家の感染研OBがいる。そこらへんがネックだった》

 民間機関がPCR検査をすると、感染研が独占する検査データが民間に流れる。それを防ぐため民間に検査をさせないとの主旨だ。ナビタスクリニック理事長の久住英二さんはこう話す。

「感染研が検査を独占すると予算が増額されるなど、彼らにとってのメリットが大きい。しかしそのために検査現場が疲弊し、患者が必要な検査を受けられない弊害は、もっと大きい」

 ちなみに、感染研は、厚労省の傘下の組織だ。厚労省役人の天下り先である。

 政府の専門家会議の尾身茂副座長は検査の目的について、「感染の可能性がある人を捉えるのではなく、重症化する可能性がある人を補足するためのもの」と説明し、「重症患者から検査する」との姿勢を示している。だから、「軽症者は病院に行かない方がいい」という理屈なのだが、それは本末転倒だ。重症患者しか検査できないのは、これまで政府が検査数を増やすことをサボってきたからであって、一刻も早く、最優先に検査体制を拡充すべきなのだ。

※女性セブン2020年3月19日号